日本鍼灸と点灸
日本鍼灸とは?
現代の鍼灸界は、日本でも世界的にも中医学が盛んで、日本の伝統鍼灸は少数派となっています。
中医学とは、戦後の中国で西洋医学と湯液(漢方薬)の理論をベースにまとめられた近代的な中国医学の体系。「現代中医学」とも呼ばれますが、論理的思考に慣れた現代人には理解しやすく、中国政府が国策として中医学の普及をしていることもあり世界の趨勢となっています。
ですから東洋医学=中医学という語られ方をされてることが多く、日本に独自の鍼灸(と湯液)の伝統があるということは、一般にはあまり知られていません。実は、日本の鍼灸と湯液は現代中医学と兄弟のような関係にあり、約1500年に渡る歴史があります。
ただし、日本の鍼灸界はあまりまとまりがなく、現時点で統一された体系もないので、数多くの流派がそれぞれのやり方を持っていて、背景となる理論も様々。はっきり言って理解しにくい。廃れつつあるには、それなりの理由があるようです。
また、長く徒弟制度で以心伝心的な伝えられ方をしてきたためか、理論が曖昧なため、学校やセミナーで学ぼうとしてもなかなか理解できないという難しさもあります。確かな技を持った先生と身近に接し、直接技を盗むようなことをしなければ、なかなか実地に使えるようにならないのです。
沢田流と点灸
先日紹介した沢田流は、そんな日本鍼灸の世界で、わりと広く知られた流派ですが、沢田流=日本鍼灸というわけでもありません。でも、沢田流の治療法や沢田健が残した言葉には、随所に日本鍼灸らしさが出ていると思います。
例えば、沢田流で基本的な灸法となっている点灸(透熱灸)は、米粒大の小さな艾を皮膚で直接燃やすお灸の方法ですが、現在、中国や韓国ではあまり使われておらず、日本の中でその伝統が残りました。(古代は中国でも行われていたようです)
点灸は他の鍼灸の技術と一緒に、1500年ほど前に日本に伝わりました。長い時間の中で、本場中国では廃れてしまったものの日本では広く普及し、江戸時代から昭和の初期にかけてはプロだけでなく、一般庶民がセルフケアの方法として日常的に使っていました。よほど日本人の体質や気候風土に合っていたのでしょうね。
庶民の治療法だったお灸
また、薬(漢方薬)は高いけれど、お灸はお金がかからないので、貧しい庶民にとっては無くてはならない治療法だったのだと思います。ちなみにお灸に使う艾(もぐさ)は、どこにでも生えているヨモギの葉を精製して作られたものです。
ただし戦後は、西洋医学と国民皆保険制度が浸透したことによる東洋医学離れ、治療に熱さを伴い、やけどや灸痕が残ることなどから倦厭され、一般の人が自分でやるということはほとんどなくなり、ほぼプロだけの技術となりました。
そのプロであっても、はやり患者が嫌がりますから、基本的に火傷をさせないように細心の注意を払い、熱くなる前に消したり、じんわりと温める程度の灸法(それはそれで効果があります)を使う人がほとんどになっています。
伝統を守る
そういった配慮は当院でも同じなのですが、僕は必要に応じて、あえて小さな火傷をさせる点灸(透熱灸)を使っています。なぜかと言えば「透熱灸」という字が示す通り、患部や経絡に熱をしっかり通すことで、他の方法では得られない高い効果を得られるからです。
点灸は、火傷をしたり痕が残ったり、患者に熱い思いをさせることなどからトラブルにもなりかねず、現代では不要な方法だと考える鍼灸師もいます。でも、やんわりとしたお灸よりも即効性があり、継続すると体質を改善する効果が大きいのです。
どこに行っても治らないような症状に悩む患者さんの中には、多少熱くても火傷をしても、早く治った方がいいという人が少なからずいます。そのような人を助けるためにも必要な施術法であり、古くから伝わる伝統医術を守るためにも、必要に応じで使って行きたいと思っています。
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