沢田健の太極治療

鍼灸真髄のカバー写真

鍼灸真髄

鍼灸真髄という本があります。

これは、昭和初期に活躍した鍼灸の名人、沢田健について書かれた本です。

鍼灸、特に日本の伝統鍼灸に興味ある人にとっては、けっこうおもしろい本だと思うので、以下に少し引用します。

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脊椎の不正と蓄膿症

ある患者(大学生)、右の肝兪のところが高くなり、左の脾兪のところが高くなり、脊柱が曲がっている。(図参照)それを診察されながら、指頭でその高いところを圧しつつ、

「これは肝臓と脾臓が悪いんです。肝臓のところ(肝臓は右にある)が高くなり、脾臓のところ(脾臓は左にある)が高くなっているのは、肝臓と脾臓がはれているのです。」

それから、右の肝兪と左の脾兪へ灸しながら、

「これはなほります。肝臓と脾臓がなほれば、この大骨のまがつたのもなほります。」

「蓄膿症がわるいのです」と同行してきた患者の母が言えば、

「肝臓と脾臓がなほれば蓄膿症などわけなく癒つてしまいます。なに五臓六腑の太極をなほせば、頭も鼻も目も耳ものども皆勝手になほつてゆきます。

それから記憶力がようなります。頭が悪くて物忘れして困るというけれど、頭がわるいんぢゃあない。内臓がわるいんです。内臓をなほせば頭など勝手になほります。

こういう道理を原則とした太極の治療をしないで、耳がわるければ耳をつつき、鼻がわるければ鼻をつつくというような、小極的な現代医学のやり方で、どうして耳も鼻もなほせるものですか。云々」

と言われた。なお、この患者の皮膚の黒いのを見、その上、身体の一面になまづのあるのを指して、

「これは腎臓がわるいのです。漢方では色を見ただけでも診断ができるので、この黒い色は腎臓のわるいしるしです。ここがわるいと根気がなくなって、食えども飢えたる如く、酔わざれども、酔えるが如し、という風になって、午後になるとねむくなるものです。」

「全くその通りです」と患者が言いつつ、先生の診断が皆あたつているのを訝れば、

「私は何も千里眼でも何でもない。志那の古代からある医学の経典の通りにいうているのです。その経典の通りに診断すればそれが当たるのです。あの表を御覧なさい。(といいつつ、室の欄間にかかげてある五臓の色体表を指して)

あれで見ると、色の黒いのは腎臓ということになっておりましょう。それから脾臓は意と知を司るとしてありましょう。で、脾臓がわるいと記憶力がなくなり、物忘れし易くなるのです。ここへ灸すれば、記憶力がよくなります。

それから腎臓のところは精と志に属していましょう。漢方で精神というのは心臓と腎臓のことで、ここがわるければ物におぢけ易く、精神の力がおとろえるというています。

それからここ(腎臓を指す)がなおつて来れば、皮膚の色もずつと白くなるし、なまづも皆とれて了います。あなたの頭に噴出しているボツボツしたものも、みんな無くなってしまいます。ちつとやれば顔がきれいになつてこたえられんのでやめられませんよ。」

(脊椎の不正と蓄膿症 鍼灸真髄より引用)

鍼灸真髄と沢田健

「鍼灸真髄」は昭和初期に活躍した鍼灸の名人、沢田健についての記録を弟子の代田文誌がまとめたもの。澤田健は、灸による腹部内臓の治療を主軸とした「太極治療」の創始者です。今でも沢田流という流派があり、多くの鍼灸師に影響を与えています。

治療法は透熱灸という、米粒大の小さな艾を皮膚で直接焼く灸法を主体とし、内臓を治す独特の基本穴を中心として囲碁の定石のように施灸していきます。また、沢田健本人は手かざしで邪気の居所を感知し、それを鍼で追い詰めていくというようなことをしていたようです。

僕がやっている鍼灸の方法は沢田流そのままではありませんが、この本が好きで、時々引っ張り出しては読み返しています。もちろん実際の治療にもかなり反映していて、基本的に使うツボの多くは、沢田健が必須と認めているものです。

日本鍼灸のシンプルさ

沢田健の残した言葉からは、複雑な理論を単純化して実践に落とし込む日本人らしさが感じられます。日本鍼灸のシンプルな技法を学んだ僕にとって、とても面白く、多くの気づきを与えてくれる本なんです。

これを読んで「面白い!」と思う人がどれくらいいるかわかりませんが、この先のブログで、個人的におもしろいと思ったところやツボについての記述を紹介してみます。たぶん、昨今流行りの中医学とはまた違った東洋医学の面白さを感じられると思います。

沢田健は、60歳の若さで糖尿病で亡くなったようです。(といっても当時の平均寿命50歳ですが)治療の名人も養生の名人ではなかったと言えるかもしれませんが、内臓の正常化を中心として万病を扱う「太極治療」の考え方は、代謝の正常化を重視する最新の生化学的な身体観とも通じるものがあります。

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