手術痕の鍼灸治療と症例

手術

手術跡の鍼灸治療

怪我や内臓の病気で身体にメスが入り、縫った跡が硬くなってしまうことがあります。縫った後、怪我や手術の痕の組織は、瘢痕化しやすく、硬くなるので循環障害や機能障害を起こしやすいです。外科や整形外科では、病気や怪我に対する手術を行い、病巣を取り除いたり、骨折を治したりはしてくれますが、その後のケアは案外してくれません。ご本人が不調や不快感、痛みなどを訴えても、怪我や手術の傷そのものが治ったのであれば、医学的にやるべきことはないのでしょう。

実は、鍼灸でそういった傷跡を柔らかくして状態を良くすることができます。以下に、当院での症例をご紹介します。

症例1、大腸がんの手術痕

ある男性は、大腸がんになり、大腸の一部を摘出する手術を受けました。手術は成功したものの下腹部に大きな傷跡が残り、突っ張る感じ、しびれ、鈍痛、冷えなどの症状に悩まされてきました。ご来院されたとき、縫い痕はすでに治癒していましたが、傷が大きかったせいか傷跡が盛り上がった状態(瘢痕・はんこんと呼びます)になり、組織がとても硬くなっていました。このような状態では血液や体液の循環が悪くなり、冷えやしびれ、慢性痛を生じやすくなります。

傷跡が柔らかくなり痛みも解消

この患者さんには、硬くなった部分に細い鍼を数多く刺入し、同時にじっくりと温めるお灸を行いました。鍼灸の施術をすると組織の緊張がゆるみ、柔らかくなります。そして、血液循環が良くなるので、冷えや痛みが解消しました。3か月ほど毎週通っていただいたのですが、傷跡の硬さはほとんどなくなり、盛り上がっていた瘢痕もあまり目立たなくなりました。それまで感じていた冷えや痛み、しびれなどの症状も無くなり、体調が全般に良くなったとおっしゃっています。

症例2、股関節を手術した女性

ある女性は病院で股関節の手術を受けましたが、大殿筋を切断するような大手術であったため、術後に強い痛みやしびれが残ってしまいました。この女性の臀部には大きな縫合痕が残り、瘢痕化して盛り上がっていました。瘢痕の周囲は赤黒くなり、全体に腫れたようになっています。術後数ケ月経過していましたが、どうも予後が悪いようでした。明らかに血液や体液のうっ滞、つまり血液や体液の循環障害が起こっていました。

しびれを伴う痛みが生じた場合は手術で神経を傷つけている可能性もあります。しかし、単に血行障害やむくみによる内圧の高まり、筋肉や周辺組織のこわばりによって神経や血管が圧迫され、痛みやしびれが生じていることも少なくありません。鍼灸で損傷した神経を治すことは困難ですが、循環障害の改善や筋肉の強ばりの解消などは得意分野です。この女性の場合、1度の施術で大幅に改善し、その後数回続けて治療するうちに、日常生活に支障がないレベルまで回復しました。おそらく血流の悪さや筋肉のこわばりが辛い症状の原因だったのでしょう。

手術後の循環障害

いままで何度か股関節の手術を受けた患者さんに会いましたが、予後が悪く、日常生活に支障をきたしている方が多いようです。その一因には、手術の傷跡が硬くなり、血液や体液の循環障害を起こしてしまうことがあります。西洋医学にはそれに対する適切な対処法がないため、傷は治っているので問題ないと言われてしまうことが多いです。

手術跡が全身に与える影響

じつは身体の一部に動きの悪いところがあると、その影響は全身に及びます。例えば、腹部の動作が制限されると姿勢が前かがみになり、肩がこりやすくなります。また、呼吸が浅くなるために全身に十分な酸素が行きわたらず、疲れやすくなったりします。

このような現象は、部分と全体の関連性を考えれば特に不思議ではないのですが、手術跡と全身的な不調の関係は見逃されていることが多いです。きちんと傷跡のケアを行って程度柔軟な状態を取り戻せば、全身にあたえる悪影響も防ぐことができますから、痛みや違和感を放置せず、治療しておいた方が良いのです。

「もう治らない」と言われて

鍼灸院にはよく、病院で「もう治らない」と宣告された患者さんがいらっしゃいます。首の骨や背骨の変形が原因の痛みやしびれの場合などに「一生治らない」と言われてしまうことが多いようです。ところが、そういう患者さんのコリや血流障害を改善すると、短期間に症状が消えてしまうことが少なくありません。おそらく症状の原因は骨や神経の異常ではなく、筋肉のコリや血液循環の悪さだったのでしょう。

鍼灸は、鍼と灸だけを使ったシンプルな治療法ですが、そのような患者さんのお役に立てることが多いのです。大きな手術の痕などは特に、強烈なコリや循環障害を生じることがあります。そのような場合、鍼灸で傷跡のケアをすると予後がとても良いのです。このような症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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