寝違えの鍼灸治療

ムチウチ症の男性

寝違え、急性の首の痛みの治療例

藤沢市にお住いの、30代男性の症例です。

5日ほど前から首が痛くなり、すぐに治るかと思っていたらだんだん悪化してきたという男性がいらっしゃいました。痛みが酷いので病院に行きましたが、レントゲンで骨には異常なしとのこと。病院としては痛み止め、湿布くらいしかやることがないので、様子見を指示されました。数日様子を見ても全く改善しないので、困り果てて当院を受診しました。

炎症はマッサージで悪化することも

来院した時は首がまったく回らない状態で、首を斜めに傾けたまま治療室に入ってきました。姿勢も変えにくいので、ベッドに座った状態で診察しました。うつむく姿勢を取ると、首から肩にかけて激痛が走ります。診察すると、肩のある部分い強い炎症が起きていました。赤く腫れ、充血した状態です。

このような状態では『組織内圧』が高まるので、痛みが強くなります。炎症を伴う急性症状の治療は、強い刺激で余計に悪化することがあるので注意が必要です。炎症が起きているときに強いマッサージを受けたり、首の牽引を受けたりすると、余計に悪化することも少なくありません。その点鍼灸は、炎症に対処しやすい施術法ですが、それでも、強い刺激をすれば悪化するリスクがあります。

組織内圧を抜く

この方の場合、初回の治療は、刺絡(しらく)という方法を使い、炎症の起きている部分の「組織内圧」を少し抜いてやる治療を行い、同時に不自然な姿勢から凝った首肩の筋肉をほぐす治療を行いました。施術後、その場である程度首が回る程度まで回復しましたが、翌日には大幅に改善し、普通に仕事に行くことができました。数日後にもう一度来院し、少し残っていたこわばりを弛めると完全に治りました。

組織内圧を抜く、というとイメージしにくいかもしれません。ねん挫で足首が腫れた経験がある方は多いと思いますが、足首の関節で炎症が起こり、血液が集まって充血してくるため、足首の中で圧力が高まります。このような圧力の高まりは痛みを増悪させますが、周囲の循環を改善することで少し抜食ことができるのです。高まりすぎた組織内圧を少し抜いてやると、痛みが軽減するだけでなく、炎症そのものが収まりやすくなります。これは鍼灸が炎症性の症状に効果発揮する基本的な仕組みです。

鍼灸は組織を傷つけずに緊張を緩めることができる

この方は肉体労働をしていますが、仕事を休めないことが首が悪化してしまった要因の一つだったようです。痛みや首が動かないという症状は、損傷した組織を守るための防衛反応ですが、筋肉の硬直化と循環障害を起こしてしまうので、放置しておくと治りが良くありません。鍼灸で組織を傷つけずに循環を良くし、筋肉の過度な緊張を取ってやることで、治癒を促進し、症状が長引くことを防ぐことができます。

刺絡治療

また、炎症部位の組織内圧を抜き、炎症を鎮め、痛みを緩和する方法に「刺絡(しらく)」と呼ばれる治療法があります。刺絡は、専用の針で皮膚表面にほんの小さな、浅い傷をつけて、ほんの少し出血させる伝統鍼灸独特の治療法です。毛細血管で滞った血流を開通させるため、痛みむち打ち症、古傷による血流障害などに大きな効果を発揮します。体質によって向き不向きがあり、誰にでもできる方法ではありませんが、当院ではこの治療法を患者さんに合わせて慎重に使うことで、効果を上げています。