血虚証の鍼灸治療

腰に手を当てる女性

東洋医学で血虚証(けっきょしょう)と呼ばれる身体の状態があります。

血虚証になると血の不足によって内臓が弱ってしまい、全身的に虚弱体質の徴候を示します。

血虚証の症状

血虚証の人には、次のような症状が多くみられます。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 貧血
  • 顔色がわるい
  • 肌荒れや小じわが目立つ
  • 乾燥肌
  • アレルギー
  • 髪にツヤがなく枝毛や切れ毛がある
  • 爪が薄く割れやすい

など。

また、代謝が低下して熱を生み出すことができなくなるので、冷え性や低体温にもなりやすい。

エネルギーを生み出す力が弱くなるため、疲れやすく、慢性的な疲労感があり、肩こりや頭痛にも悩まされます。

特に、低気圧や天気の変動に敏感で、雨が降る前に頭痛がする・・などの症状を訴える方も多いです。

血の材料は食べもの

血虚証の人は胃腸が弱いことが多く、元々多く食べることが出来ません。

特に、肉や卵など動物性の食品をあまり食べず、炭水化物に偏った食事を続けている人が多い。

消化力が弱いため、消化の負担になる肉などを食べることが出来ないうえ、血が少ないとエネルギー不足になりやすいため、甘い物や炭水化物をより多く欲してしまいます。

血の材料は食べものですから、胃腸の強さと食習慣の影響を強く受けるのです。

血虚体質の人は、レバーや赤身の肉、貝類など血を増やす食べものを積極的に食べる必要があるのですが、そもそも胃の消化力が弱いため、そういったものが苦手なことが多い。

ですから、胃腸機能を高め、消化力を助けながら、食習慣を徐々に改善していくことが必要です。

女性と血虚体質

血虚体質者は、圧倒的に女性が多いです。

血虚証の症状である貧血、立ちくらみ、冷え、頭痛、肩こり・・などは、多くの女性が訴える症状。

女性は生理で毎月出血する上に、お産や授乳で血液を失いますし、日本人の女性は肉などをあまり多く食べる習慣が無いので、より血が不足しやすい状況となっているのです。

特に、毎月の生理がうまく行っておらず、瘀血(血の滞り)や不正出血があると、血虚証はさらに治りにくくなります。そのため、生理が正常になるような体質に整えていく必要もあります。

血虚体質の鍼灸治療

このような血虚体質の方を、鍼灸ではどのように治していくのでしょうか?

血虚体質の鍼灸治療には、重要なポイントが2つあります。

それは、

  1. 胃腸機能を高めること
  2. 血の道を調えること

この2つです。

胃腸機能を高める鍼灸治療

東洋医学では脾胃の働きと言いますが、食べものを消化吸収して全身の内臓や細胞に栄養、エネルギーを分配する機能が脾胃の働き。胃腸の働きはそのためのベースになります。

胃腸機能を高めることは鍼灸の得意とするところで、胃経、脾経といった消化器系の経絡やツボを使って、直接胃腸の活動を刺激し、活発にします。

また、首や肩、背中のコリを解消したり、手足や末端の血流を改善することは、自律神経の働きを調えることに繋がり、胃腸機能を正常化します。

なぜなら、胃腸や消化器系の働きは全般に、副交感神経という自律神経がコントロールしているからです。

鍼灸の施術によってt胃腸の機能が高まれば、食欲が高まり、血の材料となる食材(肉や魚介類とその内臓など)をしっかりと食べることができるようになりますし、食べたものを効率よく消化吸収できるようになります。

これによって血の質が高まり、量も増えるので、血虚体質を治すことが出来るのです。

女性の血の道を調える

血の道とは、全身の血液循環を表すと同時に、女性の生理やお産に関する機能全般を言います。

生理痛やPMSのような、生理に伴う身体の不調は「血の道症」とも呼ばれ、冷えやホルモンバランスの乱れが原因で生じる不調です。

特に、月経の頻度が多い場合や、月経過多、不正出血などで出血傾向がある場合は、直接的に血虚体質の原因となりますから、治しておく必要があります。

女性の血に関する症状には、いくつかの特効穴があります。また、下腹部、腰、腿の内側のラインなど、子宮や骨盤内の臓器の血流と働きを直接的に高めるツボを刺激することで、子宮機能を高め、ホルモンバランスを含めた働きを正常化することが出来ます。

血虚証と思われる症状や体質でお悩みの方は、ぜひご相談ください。