鍼灸が効くしくみ

- update更新日 : 2019年12月06日
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陽のさす森

鍼灸はどうして効くの?

以前、食事指導を取り入れている治療家の会合に参加した際、西洋医学や整体などをやっている方から「鍼灸はどうして効くの??」(というか、そもそも何やってんの??)という素朴な質問を受けました。

これ、一般の人だけでなく、医療関係者や各種療法の治療家さんたち、みんな疑問に思われることのようです。そして、だいぶ誤解されていたり、怪しがられていたり、怖がられたりもしていると感じます。でも、いざ説明してみようとすると、けっこう難しいんですよね。

 

なぜ難しいかというと、鍼灸の背景にある考え方や身体の見方が、陰陽五行などの東洋思想に基づいていて、科学的な思考に慣れた現代人には理解しにくいからだと思います。でも、鍼灸は鍼と艾(もぐさ)という非常にシンプルな道具を使う方法であり、実際はそんなに難しいことをしているわけじゃありません。そこで鍼灸、特に伝統系の鍼灸が何をしているのか、どうして効くのかについて書いてみました。

循環の改善

鍼灸の効果の基本は、循環の改善にあります。循環とは、血液やリンパ液などの体液循環、流れのこと。鍼灸の世界では、これに「氣」の概念をあわせて考えていますが、とにかく目に見えるもの、見えないものが絶え間なく循環しています。

体内(外)を循環しているものを東洋医学で氣、血、水と呼びますが、氣血水が質・量ともに充実し、滞らずに巡っているのが健康な状態です。ほとんどの病気や体調不良では、この氣血水に過不足が生じ、流れもスムーズでなくなっている。つまり、何らかの循環障害が生じているんです。

そして循環障害が発生した部位では、コリ、痛み、痺れ、重さ、むくみ、腫れ、過剰な熱、冷えなど、何らかの不快な症状が出てきます。

ぱーっとよくなる

鍼灸は、鍼と艾(もぐさ)というごくシンプルな道具を使って、この循環障害を解消する医術です。単純な話、身体のある部分に鍼を一本刺すと、その部分の血流がぱーっとよくなります。血流が良くなればリンパ液なども流れますし、細胞に酸素や栄養が行きますから、エネルギー(気)も高まってきます。これは実感としてわかりますし、サーモグラフィーなどを使って視覚的に確認することもできます。

写真は、最近当院で撮った鍼のビフォーアフターです。(肩こりの女性に鍼を15分置鍼)

before

sa-mo1

after

sa-mo2

たまたまうまくと撮れたんですが、この程度の変化は難しいことしなくても普通に出ます。でも、どうして鍼で血流がよくなるのか??科学的には、異物の侵入に対する身体の反射であるようです。鍼灸大学などの研究機関でも研究されていますが、脳や神経の活動を活発したり、血管拡張・血流促進などの作用があることが認められています。

ともあれ、この「循環」という視点から見ると、まずは鍼灸の効果を理解しやすいと思います。

鍼と艾でできること

集める

散らす

促進する

偏在をバランスする

なんのこっちゃい??って思いますよね。これ、循環障害に対処する時に考えることです。

簡単に説明します。

集める

例えば、血液が足りないところは弱々しくて、血色が悪くて、冷たかったりします。本人の体感としては、冷えや重さ、だるさを感じることが多いのですが、そういう場所には「血液を集める」ような刺激をします。具体的には細い鍼を置鍼(刺したまましばらく置いておくこと)したり、お灸でじわっと温めたりすることが多いです。

散らす

あるいは血液が集まりすぎて、熱を持ってるような事があります。例えば、捻挫で足首が腫れたような状態です。このような場合は、体液が集まりすぎて組織内圧が高まり、痛みが強くなります。この苦痛を和らげるためには、組織内圧を抜くような「散らす」刺激をします。

具体的には腫れている部分の周囲に鍼や灸をして、循環を促すと、高まりすぎた組織内圧を抜くことが出来ます。また、風邪で熱が下がらない時に、肩や背中にチクチクと軽い刺激をすると、汗が出てこもった熱が発散され、熱がスーッと下がったりします。

促進する

また、血液の流れが滞ることがあります。例えば、カチカチに凝った肩こり肩周辺の血液循環は、収縮した筋肉によって滞っています。このような場合は筋肉を緩めて滞りを解消し「血流を促進する」ような刺激をします。筋肉を弛めればそれだけで血流促進になるのですが、冷えたりして足りない場合は、お灸の熱をいれてさらに促進させます。

バランスをとる

頭がのぼせて熱を持ち、足先は冷えているような人がいます。上の方に血が集まって、足の方は足りないような状態です。このような場合、冷えている足に血液を集めて「血液分布の偏りのバランスをとる」ような刺激をします。例えば、頭痛で足先が冷えていたら、足を温めることで頭痛が解消するようなことも少なくありません。

体調不良は循環障害をともなう

施術に使うのは、シンプルな道具「鍼と艾」だけですが、それぞれに血流に作用する力が強いので、こんなことができてしまうんです。もちろんやみくもに使うのではなく、経絡(気や血の通り道)、経穴(経絡上に出る反応点・治療点)、五臓六腑(つまり内臓)の状態を考慮して、どこにどの程度の刺激をするか決めていきます。

腰へ箱灸をしている女性

 

ここに書いたことは鍼灸のごく一部を説明したに過ぎませんが、東洋医学(漢方)に基づいてやっている鍼灸師の多くが、上記のような考え方、身体の見方を持っていると思います(たぶん)。もちろん、何でもかんでも鍼灸で治るわけではありませんが、ほとんどの体調不良に循環障害が伴うので、それによる苦痛をやわらげたり、回復をサポートしたりすることが広範囲にできるんですね。

まとめ

鍼灸って何? 効果あるの? なんで効くの? こんな疑問を思っていた方、少しはイメージが掴めたでしょうか。

鍼灸の効果は基本的に循環の改善にあります。血液や体液、その流れが悪くなって生じるさまざまな機能障害を、鍼と艾というシンプルな道具で活性化し、整えてゆく医術なんです。そして、体内(外)を循環するものとして氣血水という概念があり、それらが循環し、絶え間なく流れています。その流れに過不足が生じたり、滞ると病気になる。それに対して、鍼と灸を駆使して流れを良くし、過不足を整えていくということをしています。

現代的には血流やリンパ液の流れを想定すると、イメージしやすいと思います。氣はエネルギー、ミトコンドリアが作り出すATPだと考えてもいいかもしれませんが、血液や体液の流れに伴って生じる、心身の働き、生命現象全般を指しています。

鍼灸は怖い、熱い、というイメージから、敷居が高いかもしれません。でも、実際に受けてみると、けっこう気持ちのいいものです。歴史は中国で三千年、日本でも千五百年くらいありますが、その間、廃れることなく受け継がれて来た医術ですから、それなりの有効性があることは間違いありません。簡単には説明できない深い世界でもありますが、なるべく親しんでいただけるように、また時々、僕らがやっていることについて書いてみたいと思います。

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