老化予防には動物性のタンパク質を!『介護されたくないなら粗食はやめなさい』

タンパク質豊富な食事

老化とタンパク不足

『介護されたくないなら粗食はやめなさい 』  (熊谷 修 著 講談社+α新書)という本があります。

この本には老化とタンパク不足の関係などについて、豊富なデータとともに分かりやすく書かれています。

当院では日頃から、栄養充実の大切さを患者さんに話し続けています。それは老化を予防し、元気に長生きするためにも大切なこと。そして、栄養の中でも特に意識してほしいのがタンパク質なんです。

鍼灸院の患者さんには、タンパク不足の方が多いと感じています。タンパク不足になると筋肉や関節が弱くなり、身体が冷え、血流が悪くなりますから、腰痛や肩こり、ひざなどの関節の痛みが出やすいのです。

タンパク質が不足すると身体が弱ります。足腰が弱くなり、骨が弱くなり、胃腸が弱くなり、血管が弱くなる。それだけでなく、脳細胞の老化=認知症のリスクも高まります。逆に、タンパク質を十分に摂っていれば、それらの臓器を健康に保ちやすいのです。

歩行能力の衰え

だれでも年を取ると筋肉や骨が衰えますが、栄養的に見るとそれはタンパク質の不足です。年齢に関わらず、タンパク不足になると身体全体の機能が落ちますが、タンパク質の塊である筋肉が衰えるので、シニアの場合は特に歩行能力の衰えが出てきます。

歩行能力の低下は、老化を測る重要な指標になるそうです。歩行能力が衰えると要介護認定のリスクが高まり、同時に心疾患などの死亡リスクも高まるということが、この本の中でデータ挙げながら説明されています。

足腰の衰え、歩行能力の衰え、これは慢性的な栄養不足の兆候でもあります。つまり、タンパク不足と老化、病気や要介護状態になるリスクには、高い相関関係があるのです。

メタボ対策では老化を防げない

現在の日本は65歳以上が人口の2割を超え、超高齢化社会に突入しています。これは世界史的にも前例のない社会環境です。

巷では、メタボリックシンドローム対策さえ実践していれば、健康長寿が約束されると思っている人が少なくないようですが、著者は、それは錯覚であると断言しています。

メタボ対策は「栄養摂取を最小限にして運動をしましょう!」というものですから、これが栄養欠乏を伴う老化の抑制に役立たないことは、容易に理解できますね。

老化と血清アルブミン

人生の後半は、身体の筋肉と骨格の頑強さがカギを握るため、その基本栄養素であるタンパク質が決め手となります。

血清アルブミンという血液中のタンパク質を示す指標がありまが、これは血液中を流れるタンパク質の約60%を占めるものです。

アルブミンは身体の再生や修復に不可欠なタンパク質であり、加齢に伴い少しづつ低下してきます。そのため、老化の進行度合いの指標として使えるのです。この血清アルブミン、30~40歳では1リットルの血液中に45~50g含まれています。

慢性病にかかると血清アルブミン値が低下するため、中年期にこの値が低い場合は、何か厄介な病気にかかっている可能性があるということです。

血清アルブミンは、身体の中の骨格・筋肉の占める割合と比例関係を示しおり、要介護状態を予防するには、可能な限り血清アルブミンを高める必要があります。身体の栄養状態は、良ければよいに越したことはありません。

筋肉はタンパク質の貯蔵庫

筋トレをするシニア夫婦
筋トレをするシニア夫婦

筋骨格系は身体の中で、タンパク質栄養の貯蔵庫の役割を持っています。筋骨格系が衰えるということは栄養の蓄積が低下していくということでもある。

つまり「老化」=「栄養不足になる」という側面があり、老化を予防するためにも積極的な栄養摂取が必要なんです。

齢とともに筋肉骨格が衰えて行くことは自然の理ではありますが、自分の生活に責任を持てるくらいの体力は維持したいものですね。

平均寿命が倍になった理由

日本人の平均寿命は、この100年間で約2倍になっていますが、老化の進む速度が1/2になった、と言うこともできるでしょう。

平均寿命の伸びは、大半が1947年以降に達成され、特に1965年から75年の10年間に集中していました。この時期、高度経済成長によって国民生活が豊かになり、肉・卵・牛乳、乳製品および油脂類の消費が大きく増加ました。

ステーキのイメージ

このような事実から、著者は平均寿命の伸びが、動物性タンパク質摂取量増加によるものであるとしています。つまり社会が豊かになり、動物性タンパク質が豊富になるに従って、日本人の寿命はグングン伸びてきたということです。

老化を遅らせる食事10カ条

本の中には、老化を遅らせるための食生活の指針として、次の10項目が示されています。

① 欠食は絶対に避ける

② 動物性たんぱく質を十分に摂取する

③ 魚と肉の摂取は1:1(シニアは魚に偏りがち、肉も食べた方が良い)

④ 油脂類の摂取が不足しないように

⑤ 牛乳を200ml程度飲む

⑥ 食材の調理法や保存法を良く知る

⑦ 調味料を上手く使い美味しく食べる

⑧ 自分で食品を購入して、食事を準備する

⑨ 会食の機会を積極的につくる

⑩ 余暇活動を取り入れた運動習慣をつくる

シニアになるとだんだんと食が細くなる傾向がありますが、いつまでも自力で日常生活が送れるようにするためには、毎日しっかり食べる必要がありそうですね。

ちなみに、この本に記されているタンパク質の推奨摂取量は、70歳以上の男性70~75グラム、女性60~65グラムとなっています。(※肉など高タンパクな食材の量ではなくて、タンパク質そのものの量)

そして動物性食品を、70歳男性で、肉類70g、魚介類70g、卵1個、牛乳200cc程度、毎日摂取することを勧めていました。この量は、動物性タンパクで35g程度、残りは大豆製品などの植物性タンパクで摂取するということですね。

70代になって毎日これだけの動物性食品を食べている方は少ないかもしれませんが、健康な人なら、意識すれば食べられる量だと思います。また、プロテインスコアの高い動物性タンパクを意識して食べていると、豆などに含まれる植物性タンパクの利用効率も高まるはずです。

老人保健の専門家が教える「老化とタンパク質」の話、鍼灸臨床をしている私にも非常に参考になりました。おすすめの一冊です。